カブトムシ

甲虫目 カブトムシ亜目 コガネムシ科 カブトムシ亜科
Trypoxylus dichotomus
子どもたちに人気がある、なじみ深い大型のコガネムシの仲間。
オスは、光沢のある黒褐色〜赤褐色で、頭部に先端が4つに分かれた長い立派な角をもつ。前胸部にも先が2つに分かれた小さな角がある。個体によって角の形状には変異があり、小型の個体は頭部の角が小さく先端が2つにしか分かれない場合がある。メスは角をもたず、茶褐色で、全体が微毛でおおわれ光沢は鈍い。
脚に丈夫な鍵爪をもち、強い力で樹木の幹にしがみつくことができる。
里山や自然公園などの雑木林でよく見られ、夜にクヌギ、コナラなどの樹液に集まる。オスは好戦的で、オス同志やクワガタムシなど他の昆虫と始終小競り合いをしている。戦う際には、頭部の角を相手の体の下に入れて投げ飛ばす。日中にも、樹の幹で静かに樹液を舐める個体を見かけることがある。
雑木林の周囲の灯火にもよく飛んでくる。
日本全土に分布するが、北海道では近年になって急速に分布域が広がっており、本州などの個体が人為的に移入されたと考えられる。
樹液をなめるカブトムシのオス
♂ : 奈良県奈良市 2014.7.18 
昼間の雑木林でも見つかることがあるが、夜行性のため、日没後に樹液の出ているクヌギやコナラの木を見て回ると、比較的簡単に発見できる。発生地のまわりの灯火周辺も狙い目で、道路脇の電灯のほか、コンビニや自動販売機の灯りにも飛んでくる場合がある(ただし、LED化された灯火にはあまり集まらない)。早朝に灯火周辺を探すと、夜に飛来して居残っている個体が見つかるが、カラスやネコなどもカブトムシを狙っているので、これらに先を越されると、腹部のあたりを食べられた残骸だけが残っていて悔しい思いをする。
カブトムシのオス
♂ : 奈良県奈良市 2014.7.18 
赤味が強いオス。
赤味が強いカブトムシのオス
♂ : 大阪府四條畷市 2006.8.7 
黒味が強いオス。
黒味が強いカブトムシのオス
♂ : 大阪府四條畷市 2005.7.20 
オオスズメバチといっしょにクヌギの樹液をなめるカブトムシのオス。ふだんは乱暴に他の虫を追い払うスズメバチたちも、カブトムシのそばではおとなしくしていることが多い。
オオスズメバチといっしょにクヌギの樹液をなめるカブトムシのオス
♂ : 山梨県北杜市 2008.7.31 
やや小型で、角の小さなオス。
やや小型で、角の小さなカブトムシのオス
♂ : 大阪府四條畷市 2005.7.20 
メスは茶色っぽく、オスにくらべて光沢が鈍い。
カブトムシのメス
♀ : 奈良県生駒市 2014.8.25 
クヌギの樹液を吸うメスのところにオスが飛んできて、カップル誕生。
カブトムシの交尾
交尾 : 大阪府四條畷市 2005.7.20 
飼育中のオスとメス。飼育ケースには昆虫マットを敷き、足場になるような朽木などを入れておくのがいい。
エサは市販の昆虫ゼリーが適している。果物なども加えてバラエティ豊かなエサを与えるのがベター。
飼育下でも野外と同様に夜行性で、日中は昆虫マットの中に潜っていて、夜になると活発に動き出し、すごい食欲で昆虫ゼリーをみるみるたいらげてしまう。
昆虫ゼリーをなめるカブトムシのオス
飼育個体 : 1998.6. 
カブトムシのオス
飼育個体
飛ぼうとして身構えているオス。おしりをちょっと上げるのが 飛ぶ直前のお決まりポーズ。
飛ぼうとして身構えるカブトムシ
♂飼育個体(大阪府四條畷市産) : 1998.8. 
中脚を思い切り上げると同時に、上翅をひろげて、離陸準備OK。普段は見えない後ろばねと茶色の腹部が丸見えになる。
翅を広げたカブトムシ
♂飼育個体(大阪府四條畷市産) : 1998.8. 
後翅を勢いよく羽ばたかせて飛び立つ。ブーーンという大きな音とともに、重い体が見事に空中に浮き上がる。
飼育ケース内でも夜になると活発に飛ぶので、ケースの蓋はしっかり留めておくことが必要。
飛び立つカブトムシ
♂飼育個体(大阪府四條畷市産) : 1998.8. 
交尾しようとメスをつかまえたオス。メスの体が反対向けなのに、あまり気づいていないみたい。
交尾しようとメスをつかまえたカブトムシのオス
飼育個体 : 1998.6. 
こちらは まともな交尾。メスは何となく迷惑そう。オスとメスを飼育すれば、交尾は簡単に観察できる。
飼育下でのカブトムシの交尾
交尾 飼育個体 : 1998.7. 
ある日、飼育中のメスがおしりに白いかたまりを付けていた。
取って見てみると、中に卵が入っていた(普通は昆虫マットの中に潜って卵を生む)。
卵をつけたカブトムシのメス
♀飼育個体 : 1998.7 
カブトムシの卵。大きさ約3mm。生みたての卵は少し細長いが、だんだんと膨れて丸くなっていく。10日ほどで幼虫が孵化する。
カブトムシの卵
卵 飼育下 : 1998.7. 
カブトムシの幼虫。乳白色で、頭部は茶褐色。体側に茶褐色の気門が並ぶ。終令幼虫の体長は、80〜100mm。
腐葉土や朽木、木屑などを食べて育つ。里山の腐葉土を堆積した場所や、雑木林の朽木の下で見つかることが多い。秋の終わりには既に大きく育っており、幼虫で越冬する。
カブトムシの幼虫
幼虫 : 奈良県奈良市 2014.11.3 
幼虫の正面顔は、案外、愛嬌がある。
カブトムシの幼虫の顔
幼虫 : 奈良県奈良市 2014.11.3 
カブトムシの幼虫
幼虫 : 奈良県大和郡山市矢田丘陵 2005.4.6 
春の林縁で、朽木をひっくり返してみると、たくさんの幼虫が出てきた。腐葉土が堆積した中でも見つかるが、ほどよく劣化した朽木の下を探すと見つけやすい。姿は他のコガネムシ各種の幼虫に似るが、はるかに大型。
朽木の下にいたカブトムシの幼虫たち
幼虫 : 奈良県大和郡山市矢田丘陵 2005.4.6 
飼育ケースの土の中に部屋(蛹室)をつくり、蛹化した。縦方向の穴を掘り、立った姿勢で蛹になる。
5月上旬から6月中旬頃に蛹になることが多い。
蛹室の中のカブトムシの蛹
蛹 飼育個体(奈良県奈良市産) : 2016.6.18
カブトムシのオスの蛹。全体が金色の微毛におおわれている。オスには角になる部分があるのでメスとは簡単に見分けられる。
カブトムシの蛹
蛹 飼育個体(奈良県奈良市産) : 2016.6.18
カブトムシの蛹
蛹 飼育個体(奈良県奈良市産) : 2016.6.18
カブトムシの蛹
蛹 飼育個体(奈良県奈良市産) : 2016.6.18
羽化が近づき、黒味が増した蛹。羽化は、たいてい、6月から7月にかけて行われる。
うまく羽化させるためには、蛹室の中の蛹をなるべくそっとしておくのがいい。蛹を外に出して観察したい場合は、蛹室をこわさないように注意して取り出し、観察が終わったら、またもとどおりに蛹室に戻しておく。
羽化が近づいたカブトムシの蛹
蛹 飼育個体(奈良県奈良市産) : 2016.6.29