コクワガタ

小鍬形
甲虫目 カブトムシ亜目 クワガタムシ科 クワガタムシ亜科
Dorcus rectus
都市周辺ではもっとも個体数が多く、なじみ深いクワガタムシ。暗褐色〜黒色で、鈍い光沢がある。
オスは、頭楯が幅広で、大顎は細長い。大顎の中央付近にやや上向きの大きな内歯があり、先端近くにも小さな内歯がある。内歯の大きさには個体変異があり、小型個体では消失する傾向がある。上翅の点刻はあまり目立たない。
メスは、頭楯がほぼ台形で大顎は小さい。上翅の点刻はオスよりも大きくやや目立つ。
おもに平地や丘陵地、低山地に生息する。小規模な雑木林でも発生し、都市公園でも見つかることがある。
日中は樹木の根際の土中などに潜んでおり、夜になるとクヌギ、コナラなどの樹液に集る。灯火にもしばしば飛来する。
成虫または幼虫で越冬する。
丈夫で飼いやすく、環境を整えれば飼育下でも越冬させることができる。
コクワガタのオス
♂ : 奈良県奈良市 2016.1.27
大型のオス。2対の内歯が発達している。
他のクワガタとくらべると小ぶりなうえに稀少性が低いため、注目されることが少ないが、大顎の形状などはエレガントで美しい。このような魅力的な甲虫が、自然が少なくなった現代でも身近に見られるのはとても幸福なこと。
コクワガタの大型オスの大顎
♂ : 奈良県奈良市 2016.1.27
コクワガタの大型オス
♂ : 奈良県奈良市 2016.1.27
コクワガタの大型オスの頭部
♂ : 奈良県奈良市 2016.1.27
日中に樹液に来ていた大型のオス。夜のほうが探しやすいが、昼間の雑木林でも見つかることがある。
日中に活動するコクワガタの大型オス
♂ : 大阪府四條畷市 2005.6.1 
日中に、樹木の根際でじっとしていた中型のオス。大顎の先端近くの内歯は消失している。
コクワガタの中型のオス
♂ : 大阪府四條畷市 2005.6.1 
夜の樹液に来ていた小型のオス。先端近くの内歯はもちろん、中央付近の内歯も目立たない。
コクワガタの小型のオス
♂ : 大阪府四條畷市 2001.9.12 
昼間の雑木林で見つけたコクワガタのメス。上翅は、点刻がオスよりも目立ち、やや白っぽく見える。
コクワガタのメス
♀ : 埼玉県さいたま市桜区 2009.6.17 
コクワガタのメス
♀ : 大阪府四條畷市 2002.7.3 
コクワガタの幼虫。終令幼虫の体長は、30〜50mm。乳白色で、円筒形。頭部は赤褐色。腹側にC型に曲がる。カブトムシなどコガネムシ科の幼虫とくらべると、体型がゴツゴツしている印象がある。
広葉樹の立ち枯れや倒木の中で育つが、直径10cmに満たない小さな朽木片でも見つかることがある。
産卵は5〜9月頃に行われ、孵化した幼虫は朽木の中でそのまま越冬し、翌年の夏以降に朽木内に蛹室をつくって蛹化する。羽化した新成虫は蛹室内でふたたび冬を越し、3年目の初夏以降にようやく朽木の外に出て活動する。
コクワガタの幼虫
幼虫 : 京都府京田辺市 2017.3.24
コクワガタの幼虫の頭部。カブトムシの幼虫とくらべると、頭部の色が明るく、大顎が直線的。腹端にある肛門が縦に割れるのも特徴(コガネムシ科の幼虫は横に割れる)。
コクワガタの幼虫の頭部
幼虫 : 京都府京田辺市 2017.3.24
朽木の中に潜んでいたコクワガタの幼虫。
朽木の中に潜んでいたコクワガタの幼虫
幼虫 : 京都府京田辺市 2017.3.24
まだ小さなコクワガタの幼虫。胴部に透明感がある。
まだ小さなコクワガタの幼虫
幼虫 : 大阪府東大阪市 2017.2.16
コクワガタの蛹。琥珀色で美しい。大顎になる部分の形状で、雌雄が簡単に見分けられる。この個体は、大型のオス。
コクワガタのオスの蛹
♂蛹 : 飼育個体(京都府京田辺市産) 2017.6.16
こちらは、メスの蛹。小さな大顎がかわいい。
コクワガタのメスの蛹
♀蛹 : 飼育個体(大阪府東大阪市産) 2017.6.16
内壁が滑らかな楕円体の蛹室をつくり、その中で蛹化する。
コクワガタのメスの蛹(側面)
♀蛹 : 飼育個体(大阪府東大阪市産) 2017.6.16