里山や自然公園を歩いていると、道端に切り出したままの樹木(=伐採木)が積まれていることがあります。雑木林の整備のため、燃料としてのまきを得るため、またシイタケ栽培のホダ木に利用するためなど、その目的は様々。
でも、虫探検家たるもの、伐採木を見つけたら、決して見過ごしてはいけません。腰をかがめ、顔を近づけ、心を沈めてゆっくり観察すると、思いのほか、たくさんの虫たちの姿に気づくことでしょう。
特に、幼虫が材を食べて育つカミキリムシやタマムシの仲間にとって、伐採木は、いわば社交場。運がよければ、一度にたくさんの種類に出会ったり、交尾や産卵シーンを観察することもできます。
今回は、伐採木に集う虫たちの姿を追いましょう。
山道の脇に無造作に積まれた伐採木。特に、クヌギ、コナラ、サクラなど、広葉樹の伐採木にはたくさんの昆虫が集まります。
あまり細いものはダメですが、15センチ以上の直径があれば、昆虫発見の期待が膨らみます。
まずは、伐採木ワールドの主役、カミキリムシたちのファッションショー。
趣向を凝らした色模様もさることながら、そのスタイルのカッコよさに惚れボレしてしまいます。
左上:キイロトラカミキリ 右上:ナガゴマフカミキリ
左中:シラホシカミキリ 右中:エグリトラカミキリ
左下:ヒメヒゲナガカミキリ 右下:ミドリカミキリ
こちらは、蜂に擬態したカミキリムシたち。特に、飛んでいると蜂にそっくりなので、だまされないようにしましょう。
左上:クビアカトラカミキリ 右上:ヨツスジハナカミキリ
下:キスジトラカミキリ
伐採木だけでなく、周辺の植物上にも目を向けてみましょう。伐採木目当てでやってきて、小休止している虫たちの姿が見つかります。
左:ヨツキボシカミキリ 右:キボシカミキリ
カミキリムシの仲間でぜひとも出会いたいのは、このルリボシカミキリ。爽やかなブルーと鮮やかな黒紋は、一度見たら、忘れられません。 もともとは、高原や深い山でだけ見られるものでしたが、近年は東京・横浜近郊にも勢力をひろげており、出会える可能性が高まっています。
こちらは、見落としに注意したい地味系の昆虫たち。
一見、なんにもいないと思えた場所も、あきらめずに「虫の目」を駆使して観察すると、こっそり身を隠している彼らの姿が浮かび上がってきます。
左上:ハギキノコゴミムシ 右上:ハムシダマシ
左中:キマワリ 右中:ナガニジゴミムシダマシ
左下:トビイロオオヒラタカメムシ 右下:コバネヒョウタンナガカメムシ
虹色に輝く伐採木クイーン‥ といえば、ご存知、タマムシ。サクラ、エノキ、ケヤキなどの太い伐採木が転がっていたら、発見できるチャンスがあります。
人の気配にかなり敏感なので、タマムシを見つけたら、できるだけ静かに観察しましょう。せっかく出会えたのに、美しい姿に目が眩んだとたん、翅を広げて、空の彼方にはいサヨウナラ、ということにならないように。
左:サクラの伐採木上で産卵する場所を物色しているタマムシ
右:同じくサクラに来ていた小型のタマムシの仲間、ムツボシタマムシ
昆虫がたくさん集まる伐採木の現場には、獲物を狙う肉食昆虫や寄生蜂、トカゲの仲間もよく姿を見せます。
彼らもまた、伐採木を舞台にした生態系の大事な担い手たちです。
左上:アリに擬態するハエトリグモの仲間、アオオビハエトリ
右上:甲虫などを捕えて体液を吸ってしまう吸血昆虫、チャイロオオイシアブ
トカゲの仲間は、伐採木の上で、よく日向ぼっこをしています。
左下:ニホンカナヘビ
右下:ニホントカゲ
最後は、積まれた伐採木の間に巣を造っていたキイロアシナガバチのファミリー。
上の二匹は、こちらに向かって威嚇を始めています(これ以上、刺激すると、攻撃してくるので、大変危険です)。
伐採木は、蜂たちにとっても居心地のいい場所なので、こんな場面に出くわさないよう、十分に注意しながらウォッチングしましょう。
(初出 「むし探検メール No.70」)
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