夏には虫たちでにぎやかだった雑木林も、冬場はひっそりとしずまりかえっています。
‥でも、ちょっと気をつけて探索すると、さまざまな発見をすることができます。
モス・ウォッチングの「モス」とは、蛾のこと。
ここでは、蛾の仲間をテーマにした、冬場のウィッチング・ポイントをご紹介します。
冬の雑木林。木々の葉が落ちているのでとても明るく、気持ちのいい散策を楽しむことができます。一見、何もいないように見えるこの風景。いったい、どんな発見が待っているのでしょうか‥?
■繭ウォッチング
ガの仲間には、個性的な繭をつくるものがたくさんいます。冬の林は見通しがいいので、木の枝などにつくられた繭が見つけやすくなっています。(ただし、この時期の繭は、成虫がすでに羽化したり天敵に食べられてしまったあとの空繭がほとんど)
昔から人々の目に留まることが多かったのか、それぞれの形態にちなんで、面白い俗称がついているものもあります。
左はヤママユガの繭。整った卵型をしています。
右はウスタビガの繭。きれいな緑色なので、遠くからでもよく目立ちます。その形から、俗に「ヤマカマス」と呼ばれます。この繭は横っちょの部分が破れているので何かトラブルがあったようです。(カマスとは、穀物を入れる袋のこと)
どちらも、クスサンの繭。編み目になっていて透けているので、「スカシダワラ」と呼ばれます。
白黒に塗り分けられたイラガの繭。この繭には越冬中の生きた前蛹が入っています。俗称はなんと「スズメの小便たご」。(たごとは、肥桶のこと)
■冬こそ天下 フユシャクの仲間たち
日本国内に36種類が知られるフユシャクの仲間は、ほかの昆虫たちが休眠するオフシーズン(晩秋〜早春)をあえて選んで活動します。
フユシャクの代表種2種。
左は、クロスジフユエダシャク。11〜12月頃に多く見られます。
右は、シロフフユエダシャク。こちらは、2〜3月が最盛期。
いずれも日中にも活動し、雑木林を歩いていると、地表や樹木の幹から次々に飛び立ちます。
この2枚は、フユシャクの仲間のメスたち。
フユシャクのメスは、たいてい、翅が退化していて飛ぶことができず、フェロモンを出してオスを呼び寄せます。
左の種類は小さな翅の痕跡が残っていますが、右の種類は翅が完全に消失しています。
■じっと寒さに耐える越冬蛾たち
秋に羽化して、成虫の姿で冬を耐え抜く蛾の仲間もたくさんいます。これらの蛾は、フユシャクとは違って、冬期に繁殖活動をすることはありません。
ヤガの仲間のキノカワガ。その名のとおり、質感も色彩も樹皮にそっくり。
どちらもハマキガの仲間。左は、プライヤハマキ、右は、ナカジロハマキ。
越冬蛾たちは、近づいても飛び立ってくれないことが多いので、じっくり探さないと見つかりません。
いかがでしたでしょうか? 冬の日のモス・ウォッチング。
虫なんか何もいないように思える冬の雑木林でも、さまざまな発見ができます。
天気がよくて風のないおだやかな日を選んで、ぜひ出かけてみてください。
(初出 「むし探検メール No.24」)
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