野山をのんびり歩いていると、ふと、道端の植物にくっついている、へんてこな物体に気づくことがあります。
それは、「虫こぶ」。
「虫えい」と呼ばれることもあります。英語では、「ゴール(Gall)」といいます。
なぜ、「虫こぶ」と呼ばれるかというと、その中に潜んでいる虫たち(=形成者)がもたらす刺激によって、植物の細胞や組織が増殖・肥大して作られるものだからです。
虫こぶには、たくさんの種類があり、日本国内だけで1400種以上が記録されていて、もちろん、いちいち名前もついています(虫こぶの名前は、『寄主植物名+見た目そのまま』という方針で付けられていて、独特の趣があります)。
今回は、身近な自然の隠れたアート、虫こぶの世界に遊びましょう。
ノイバラの葉裏に、まるでペンダントのように付いているバラハタマフシ。球形で短い突起があります。この中には、バラハタマバチの幼虫が入っています。(6月上旬撮影)
丸いもの、尖ったもの、縮んだもの、イガイガのもの‥ 虫こぶのスタイルは千差万別。
左上:エノキハトガリタマフシ(形成者:エノキトガリタマバエ)(5月中旬撮影)
右上:ミズキハミャクフクレフシ(形成者:タマバエの一種)(4月下旬撮影)
左下:クヌギエダイガフシ(形成者:クヌギエダイガタマバチ)(10月中旬撮影)
右下:クズハウラタマフシ(形成者:タマバエの一種)(9月中旬撮影)
同じ植物に、いろいろな虫こぶが付くこともあります。この3種は、ヨモギ・トリオ。
上:ヨモギハシロケタマフシ(形成者:ヨモギシロケフシタマバエ)(9月下旬撮影)
左下:ヨモギハエボシフシ(形成者:ヨモギエボシタマバエ)(6月下旬撮影)
右下:ヨモギクキワタフシ(形成者:ヨモギワタタマバエ)(9月下旬撮影)
葉っぱに、たくさんのイボイボが付いていたら、虫こぶの可能性大です。
左:クズハトガリタマフシ(形成者:クズトガリタマバエ)(9月上旬撮影)
右:ハンノキハイボフシ(形成者:フシダニの一種)(6月中旬撮影)
同じ虫こぶでも、その形や色彩は変化に富んでいます。
上の3枚は、いずれもヌルデミミフシ。(形成者:ヌルデシロアブラムシ)(上2枚 10月上旬撮影、下 9月中旬撮影)
時には、こんな、凝った作品も。
ノブドウミフクレフシ(形成者:ノブドウミタマバエ)(10月上旬撮影)
油断していると、「虫こぶに見えて虫こぶではないもの」に騙されることもあるので注意しましょう。
左:コブシの実 (7月上旬撮影)
右:ヤマノイモのむかご (10月上旬撮影)
ミズナラに付いていたナラメイガフシ。アーティストは、ナラメイガタマバチ。まるで、自然界からのプレゼントのようです。(8月下旬撮影)
(初出 「むし探検メール No.71」)
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