秋が深まり気温が下がるにつれて、だんだんと虫たちの姿も減ってきます。
そんな季節に、身近な自然での絶好のウォッチングポイントとなるのが、黄色い花をいっぱいつけたセイタカアワダチソウの群落です。
ここでは、セイタカアワダチソウ・ウォッチングで見つかる昆虫たちをご紹介します。
セイタカアワダチソウは、北アメリカから入ってきた帰化植物。非常に生命力が強く、日当たりのよい場所であればいたるところに生え、今では、都市周辺部などでは最も普通に見られる植物のひとつになっています。
あまり、良い印象を持たれることの少ない植物ですが、10月から11月にかけては、黄色の花をいっせいに咲かせます。この花が、蜜や花粉を求める虫たちにとって、絶好の食糧源になります。
これは、小さな川沿いの道ばたに延々と続くセイタカアワダチソウの花畑。
何しろ、あらゆるところに生えているので、見つけるのには苦労しません。
休耕田の脇に生えたセイタカアワダチソウ。
花が咲きそろって、なかなかの美しさです。このような、ちょうど花盛りの群落を選べば、たくさんの昆虫たちが観察できます。
セイタカアワダチソウ限定昆虫図鑑 奈良県生駒市の一角で行ったセイタカアワダチソウ・ウォッチングの成果です。
セイタカアワダチソウで一番よく見られるのが、せっせと働くミツバチの働き蜂たち。
よく見ると、もともと日本の自然環境に生息しているニホンミツバチ(左)と、養蜂のために海外から移入されたセイヨウミツバチ(右)が混ざっています。
ニホンミツバチは黒っぽく、セイヨウミツバチは腹部上部がオレンジであることで見分けられます。
ミツバチよりもひとまわり大きなハチたちもやって来ます。
左はハラナガツチバチ、右はヤマトアシナガバチ。時には、獲物を探すスズメバチの姿が見られることも。
ハチと並ぶセイタカアワダチソウ群落の主役は、チョウの仲間たち。
左はウラナミシジミ、右はチャバネセセリ。いずれも、秋になると個体数が増える南方系の蝶。
可憐なベニシジミ。秋には、なぜか、春に多く見られる春型(左)と、夏に見られる黒化した夏型(右)の両方が観察できます。
左はツマグロヒョウモン、右はキタテハ。セイタカアワダチソウの上を元気に飛び回っているオレンジの蝶は、たいていこの2種のどちらかです。日が傾く頃に観察すると、オレンジが映えて一層美しくみえます。
セイタカアワダチソウ群落の周縁で追いかけあうモンシロチョウたち。ここは、チョウたちにとって、恋の舞台でもあります。
セイタカアワダチソウの穂先では、冬眠を間近に控えたテントウムシの仲間がじっととまっているのをよく見かけます。左はナミテントウ、右はナナホシテントウ。エサのアブラムシもいないのに、いったい何をしてるのでしょうか‥。
こちらはカメムシの仲間たち。左はブチヒゲカメムシ。右はホソハリカメムシ。
アブやハエの仲間も、たくさんの種類が見られます。
左はツマグロキンバエ、右はオオハナアブ。
花の内部にはハナグモがよくひそんでいます。左は、見つかったために花の表面に出てきたオス。右は、ツマグロキンバエを捕らえたメス。もしも、ハエやチョウが変なポーズで花にとまっていたら、こんなふうにクモに捕まっている可能性があります。
茎に産みつけられたチョウセンカマキリの卵。セイタカアワダチソウは、秋の虫たちに食べ物を与えるとともに、冬を越す虫たちのゆりかごの役目もはたしています。
いかがでしたでしょうか? セイタカアワダチソウを舞台にした昆虫ウォッチング。
天気がよくて暖かい秋の日には、ぜひ散歩がてら 出かけてみてください。
(初出 「むし探検メール No.20」)
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