都会に住む人々や働く人々に憩いの場を提供する都市公園。
コンクリートジャングルの中の貴重な緑のスポットは、昆虫たちにとっても命をつなぐ大切なオアシスになっています。
今回は、春から初夏にかけての都市公園で見られる昆虫たちをご紹介します。
(取材地:大阪都心部の公園)
4月
4月といえば、花と新緑。お花見の人々が訪れ、公園が1年中で一番にぎわう季節です。
冬を耐えてきた昆虫たちも、人知れずその営みを始めています。
サクラが満開になった春の公園。ケヤキの枝先も淡緑に芽吹きました。
ヒイラギナンテンの植え込みで翅を休めるナミアゲハ。アオスジアゲハ、クロアゲハなど、アゲハチョウの仲間は、都会でもよく見られます。
左:サンゴジュの葉を丸くかじり取るサンゴジュハムシの幼虫。公園に植栽される樹種によって、棲みつく昆虫の顔ぶれも変わります。
右:ヒラタアブの一種の幼虫。こちらは肉食で、植物につくアブラムシを食べて育ちます。
左:花が散ってしまうと、サクラの枝にこんな白い網が目立つようになります。その正体は、オビカレハという蛾の仲間の幼虫たちが造った巣。よく見ると、巣の中にたくさんのケムシが‥。
右:成長して巣を離れ、サクラの幹で休んでいたオビカレハの幼虫。
都会の公園でも、思わぬ昆虫に出会うことも。つつじの植え込みにひっそりとまっていたカゲロウの一種。
5月
5月になると、植物がグングン生長し、それぞれの植物に決まった種類のアブラムシの仲間が大発生します。
アブラムシを目当てにして肉食昆虫たちも集まってくるので、弱肉強食のドラマを観察することができます。
左:葉っぱをひろげるキョウチクトウ。茎に見える黄色い部分はキョウチクトウアブラムシの集団です。
右:キョウチクトウアブラムシの集団に接近してみると、なにやらヘンな生き物が‥。これは、アブラムシを食べて育つクサカゲロウの一種の幼虫。
左:アブラムシがたくさんついたムクゲの木にやってきたクモンクサカゲロウ。
右:アブラムシがいっぱいの新芽に産みつけられたクサカゲロウの卵。卵は細い糸で葉っぱや茎にくっついています。
左:アブラムシの群れを襲うコクロヒメテントウの幼虫。蝋物質で体を覆うことによってカイガラムシに擬態し、アリの攻撃を逃れています。
右:こちらはナミテントウ。やっぱりアブラムシのごちそうが目当てです。
左:サンゴジュの葉裏につくられていたオビカレハの繭。
右:大木の幹に特異な形状の網を張るクロガケジグモ。オーストラリア原産の帰化種です。
左:サクラにとまるマエアカスカシノメイガ。飛んでいると、ただの小さな白い蛾だけど、とまったところをアップで見ると、まるで天女のような美しさです。
右:ちょっとパンダっぽい模様のクロオビハナバエ。
左:地表をピンピンはねる小さなバッタ、ヒシバッタ。体が小さい分、適応力があるのか、都会の中の小さな自然でもしたたかに生きています。
右:公園にはこんなありがたくない虫も‥。服にとまって血を吸おうとするヒトスジシマカ。
樹木が青々と茂る初夏の公園。夏が近づくにつれて、見られる昆虫の種類もどんどんと増えていきます。
6月
梅雨の季節に入ると、昆虫たちの種類もピークに達します。
雨が多いということは、晴れ間が覗いた日には昆虫たちがいっせいに活動するということ。このチャンスを逃す手はありません。
葉っぱの上で交尾するキタヒメヒラタアブ。
都市公園でのウォッチングとしてはちょっと掘り出し物の2種
左:葉っぱにとまっていたミスジガガンボ。
右:こちらは、葉っぱの上を歩き回っていたイトカメムシ。
左:シロツメクサ(クローバー)で吸蜜するヤマトシジミ。幼虫はカタバミを食べます。
右:同じくシロツメクサに来たキオビツチバチ。花から花へ、めまぐるしく飛び回ります。
左:シロツメクサの花の中にじっととまっていたハマベアワフキ。カムフラージュしているつもりかな?
右:葉っぱの裏にとまったセスジノメイガ。蛾の仲間は、よく葉の裏にピタッととまります。慎重に葉を裏返すと、すばらしい翅のデザインをじっくり鑑賞できるかも‥。
左:木の幹にとまっていたヒロヘリアオイラガ。
右:近頃、公園の木の幹でよく見かけるこの丸いものは、実はヒロヘリアオイラガの繭。上部が空いているのは、すでに成虫が羽化したあとの空繭です。
小さな雑草の茂みにいたショウリョウバッタの幼虫。これから草をもりもり食べて、夏の終わりには大きな成虫に育ちます。
いかがでしたでしょうか?都市公園の昆虫たち。
みなさんも、公園の近くをとおりかかる機会があったら、都会の中の小さな自然にちょっと足を踏み入れてみてください。
(初出 「むし探検メール No.27」)
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