猛烈な暑さが続く夏‥ 太陽が照りつける日中は、昆虫たちの姿も少なくなってしまいます。
そこで、注目すべきウィッチング・ポイントが、「灯火」です。
ここでは、短時間で効率よく、夜行性昆虫を中心とする様々な虫たちが観察できる、灯火を利用した昆虫観察をご紹介します。
■なぜ、灯火に虫が集まるのか?
「飛んで火に入る夏の虫」という慣用句もありますが、そもそも、なぜ、昆虫たちは灯火にやって来るのでしょうか?
昆虫は、外灯などの光を、太陽、月、星などの自然光と混同して集まってくると言われています。 昆虫には、地面と並行に進むために、光のやってくる方向と約80度の角度を保ちながら飛ぶ習性があるらしいです。
月や星は、十分遠くにあるので、この方法で実際にまっすぐ飛べるのですが、外灯などの人工光は、近くにあるので、常に光源と80度の角度を保って飛んでいるうちに、らせん形の飛行曲線を描き、ついにその光源にたどりついてしまう、というわけです。
よく観察すると、ガなどが光にやってくるとき、遠くから一直線に光に向かうのではなく、らせんを描きながら飛んでくるのがわかると思います。
■どんな場所を選べばいいのか?
では、どんな場所にある灯火に、昆虫は集まりやすいのでしょうか?
簡単に言えば、
「近くに昆虫がたくさん生息している野山や川があって」
「まわりに明るいモノが少ない環境で」
「かなり強い光を放っている灯火」
ということです。
たとえば、以下のような場所はかなり強力なポイントになる可能性があります。
◎雑木林や川のそばに立っている外灯
◎山間部を走る高速道路のドライブ・イン
◎山間にある宿の灯火
◎キャンブ場の自動販売機や炊事場付近
自然公園の入り口にポツンと立つ外灯。夜は昆虫たちであふれかえる。
■何時ごろがいいのか?
灯火ウォッチングに適した時間帯は、次の2つです。
◎日没後数時間
日没後から夜10時ごろまでは、夜行性の昆虫たちが最も活発に活動する時間帯です。良いポイントでは、次から次へと昆虫がやって来るので、一度点検したあとでも数十分してからもう一度見て回ると思わぬ大物が見つかったりします。
この時間帯のウォッチングは暗くて危ないし、昆虫も見にくいので、赤いセロハンを貼った懐中電灯を用意すると重宝します。(赤い光は昆虫を刺激しにくい)
◎早朝
安全にウォッチングしたい場合は、朝がオススメ。
夜のうちに集まってきた虫たちが、灯火の周辺にじっととまっているのが観察できます。
灯りのすぐそばだけでなくて、少し離れた場所の地面や植物上も含めて念入りに調べましょう。
■どんな色の灯火がいいのか?
赤みがかった光よりも、白〜青白い光を放っている灯火に、昆虫たちはたくさん集まって来ます。これは、昆虫たちの視覚が、赤系統とりも青系統の光をより感じやすくなっているからです。
(前の項で、懐中電灯に赤いセロハンを貼ることをオススメしたのもこのため)
■灯火で見られる昆虫たち
◆種類は無限、ガの仲間
灯火ウォッチングで一番よく見られるのは何といってもガの仲間。
一回の観察だけで、数十種類も確認できることもしばしばです。
左:掌ほどもある巨大なガ、オオミズアオ
右:朝の外灯脇で見つけたキオビゴマダラエダシャク
◆樹液観察より効率的?甲虫の仲間
子供たちの人気者、カブトやクワガタ、それにカミキリムシもよく灯火にやってきます。
光源にぶつかって、その真下によく落っこちています。ネコ(夜)や鳥(早朝)も、甲虫を食べようと狙って灯火周辺にやってくるので、先を越されないように!
左:ログハウスの外灯に飛んできたゴマダラカミキリ
右:クモの巣を体にひっつけて落下したミヤマクワガタ
◆夜ふかし組?セミ、カメムシの仲間
昼光性のはずのセミやカメムシの仲間もよく灯火にやってきます。きれいな声で有名なヒグラシは、日中は声は聞こえてもなかなか姿を確認できませんが、灯火では簡単に観察できます。
左:灯火の下の地面にとまっていたヒグラシ(腹部の白いものは、セミヤドリガという寄生蛾の幼虫の巣)
右:宿の壁にとまっていたツヤアオカメムシ
◆食事が目当て?バッタの仲間
バッタ目の大物たちも、灯火の周りによく陣取っています。彼らは、灯火に集まる他の昆虫たちや、その死骸を目当てにしているようです。
左:宿舎のエントランスにいたヤブキリ
右:同じ場所で見つけたマダラカマドウマ
いかがでしたでしょうか? 灯火ウォッチングって、かなり魅力的でしょう?
でも、最後に、大事な注意点をひとつ。
灯火ウォッチングは、人間の生活圏と重なる場所での観察になり、また時間帯も特殊なので、ともすると不審に思われることがあります。
昆虫観察に夢中になるあまり、マナー違反をしないように注意して、くれぐれも他人の迷惑にならないようにしてくださいね。
(初出 「むし探検メール No.17」)
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